機動戦士ガンダムUC バンデシネ 大森倖三 2024.11.16 ラプラスの箱を巡り、バナージとフル・フロンタルは、互いの信念を懸けて激突する。ネオ・ジオングの圧倒的な力、そしてフロンタルの語る『宇宙の真理』の前にバナージは、「それでも」希望を失わずに進めるのか…? レビューを見る 購入・お申し込みはこちら
圧倒的な物量でユニコーンやバンシィを押し潰さんとするネオ・ジオング。おまけにフル・フロンタルが見せてくるのは刻の終わりですかどれだけの奇跡によって可能性が示されても変わらずに争いを続けた人類が行き着く先。それこそがフル・フロンタルが見たニュータイプとしての絶望か… 未来への可能性を考えられなくなったフル・フロンタルにバナージが示すのは「それでも…」という人間の可能性と刻の終わりに至らない永遠の光正直、この辺りの描写の意味は観念的過ぎて自分にはよく判らなかったりするのだけど、空っぽの器でしかなかったフル・フロンタルが本物のシャア・アズナブルと巡り会えた、その一点でフル・フロンタルが持ち得なかった可能性へと奇跡的に至れたと解釈出来るのかな…… そしてフル・フロンタルとは別方向からやってくる可能性を潰す『砲火』これを主導するのがマーサだけでなく、リディの父であるローナン議長というのは因果な話。息子のリディは『箱』を守ろうと心を変えられたのに、ローナン議長は無茶苦茶な理論武装をして『箱』を潰そうとし続けている。『可能性』を無くしてしまおうとしている そんな彼を驚愕させるリディの居所。既にスイッチは押されてしまったとはいえ、ここで彼が発射停止に動いたり、何か叫んだりしないのはそれだけ「平和を守る為」という無茶な理論武装が自分自身を縛っているからなのだろうね『箱』の呪いで縛られていると思いこんでいた彼を本当に縛っていたのは「平和の為なら犠牲を許容する」というお題目であったわけだ だとしたら、サイコ・フィールドによってコロニーレーザーを防いだユニコーンとバンシィは人々が不可能だと思っていた事象を可能にするという、いわば『可能性』を実現する存在となったと言えるのかなだからこそその状態でミネバは『可能性』に懸けて『ラプラスの箱』を開示できたのだろうね 冒頭の口絵が良いね。序盤に行われた二人のデートは戦争を止める目的があった為に街の散策は主目的とならなかった。けれど、口絵の日常に溶け込んでいると伺わせる二人の様子はそういった散策を堪能できる日々に辿り着いたのではないかと思わせるものだったよまあ、実際は『箱』が開かれても戦争は続くわけだから、本当の意味で二人がそういった日々を体験できたのかはそれこそ『可能性』の話なのだろうけどね 実はこの作品に対して、物語の終わり方がとても納得出来なかった為に作品全体の評価を下げてしまった過去があったりするこうして再読してもやはり終わり方には納得できていなかったりするのだけど、それでも正体不明の『ラプラスの箱』に振り回されながらも、様々な『可能性』を求めて藻掻く人々の生き様が描かれていたのだと再認識できた意味で価値ある再読だったと言えるかな
コメント
おまけにフル・フロンタルが見せてくるのは刻の終わりですか
どれだけの奇跡によって可能性が示されても変わらずに争いを続けた人類が行き着く先。
それこそがフル・フロンタルが見たニュータイプとしての絶望か…
未来への可能性を考えられなくなったフル・フロンタルにバナージが示すのは「それでも…」という人間の可能性と刻の終わりに至らない永遠の光
正直、この辺りの描写の意味は観念的過ぎて自分にはよく判らなかったりするのだけど、空っぽの器でしかなかったフル・フロンタルが本物のシャア・アズナブルと巡り会えた、その一点でフル・フロンタルが持ち得なかった可能性へと奇跡的に至れたと解釈出来るのかな……
そしてフル・フロンタルとは別方向からやってくる可能性を潰す『砲火』
これを主導するのがマーサだけでなく、リディの父であるローナン議長というのは因果な話。
息子のリディは『箱』を守ろうと心を変えられたのに、ローナン議長は無茶苦茶な理論武装をして『箱』を潰そうとし続けている。
『可能性』を無くしてしまおうとしている
そんな彼を驚愕させるリディの居所。
既にスイッチは押されてしまったとはいえ、ここで彼が発射停止に動いたり、何か叫んだりしないのはそれだけ「平和を守る為」という無茶な理論武装が自分自身を縛っているからなのだろうね
『箱』の呪いで縛られていると思いこんでいた彼を本当に縛っていたのは「平和の為なら犠牲を許容する」というお題目であったわけだ
だとしたら、サイコ・フィールドによってコロニーレーザーを防いだユニコーンとバンシィは人々が不可能だと思っていた事象を可能にするという、いわば『可能性』を実現する存在となったと言えるのかな
だからこそその状態でミネバは『可能性』に懸けて『ラプラスの箱』を開示できたのだろうね
冒頭の口絵が良いね。
序盤に行われた二人のデートは戦争を止める目的があった為に街の散策は主目的とならなかった。
けれど、口絵の日常に溶け込んでいると伺わせる二人の様子はそういった散策を堪能できる日々に辿り着いたのではないかと思わせるものだったよ
まあ、実際は『箱』が開かれても戦争は続くわけだから、本当の意味で二人がそういった日々を体験できたのかはそれこそ『可能性』の話なのだろうけどね
実はこの作品に対して、物語の終わり方がとても納得出来なかった為に作品全体の評価を下げてしまった過去があったりする
こうして再読してもやはり終わり方には納得できていなかったりするのだけど、それでも正体不明の『ラプラスの箱』に振り回されながらも、様々な『可能性』を求めて藻掻く人々の生き様が描かれていたのだと再認識できた意味で価値ある再読だったと言えるかな